内湾海底泥中の有鐘繊毛虫類シストの定量法


[要約]
 内湾海底泥中に存在する直接計数の困難な有鐘繊毛虫類シストの定量法を開発した。この方法を北部広島湾で適応した結果、シストの密度は0.2〜4.5個体/g湿泥の範囲にあり、プランクトンとして多く出現する海域で高くなった。
南西海区水産研究所 赤潮研究部 漁場保全研究室
[連絡先]  0829-55-0666
[推進会議] 南西ブロック水産業関係試験研究推進会議
[専門]     漁場環境
[対象]     プランクトン
[分類]     研究

[背景・ねらい]
 富栄養化の進んだ内湾域では、植物プランクトン群集の中で微細藻類が占める割合が高く、それらを効率的に摂餌できる微小動物プランクトンが生態系のなかで大きな役割を果たしていることが明らかにされてきた。一方、微小動物プランクトンの主要群の一つである有鐘繊毛虫類の生活環の解明のため、直接計数することが困難な有鐘繊毛虫類シストの定量法を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. 海底泥の20-125μmの画分にほとんど有鐘繊毛虫類シストが存在し、多くの種は、温度20℃、2-7μE/m2/sec以上の光条件、微細藻類の存在下で刺激され5日間で脱シストすることを明らかにした。
  2. この結果をもとにバクテリアのシスト計数に用いられている最確数(MPN)法を改変し、表層泥中の有鐘繊毛虫類シストの定量法を開発した。
  3. 北部広島湾において有鐘繊毛虫類シストの分布を調べた結果、シストの密度は0.2〜4.5個体/g湿泥の範囲にあり、夏季にプランクトンとして多く出現する海域に高くなった。

[成果の活用面・留意点]
 ここで開発された手法は夏季に出現する種類を対象としているが、幅広い海域で活用ができる。得られたデータと他の環境情報を解析することによって、富栄養化した海域に有鐘繊毛虫類が多量に出現する機構の一部が解明できる。
[具体的データ]
図1
図2.改変MPN法の操作手順
図3.北部広島湾の表層泥中における有鐘繊毛虫類シストの分布

[その他]
研究課題名:富栄養海域の特殊生態系における微小動物プランクトンの役割
予算区分 :経常
研究期間 :平成7年(平成4年〜6年)
研究担当者:神山孝史
発表論文 :Journal of Plankton Research, 18(7),1996 印刷中