イカナゴ仔稚魚における耳石輪紋形成の日周性の確認
- [要約]
- 大阪湾におけるイカナゴ仔稚魚の成長を解析するための基礎データとして,イカナゴにおける耳石輪紋形成の日周性を確認した.
大阪府立水産試験場
[連絡先] 0724-95-5252
[推進会議]瀬戸内海ブロック
[専門] 資源評価
[対象] いかなご
[分類] 研究
- [背景・ねらい]
- 大阪府では,機船船曳網の重要漁獲物であるイカナゴの資源管理を行っている.その中で,解禁日の設定の際に重要なイカナゴ仔稚魚が漁獲サイズとなる時期を推定するために,現在では試験操業や漁獲物から推定した日間成長量を用いている.しかし,上記の方法で推定した日間成長量はその年の産卵期の長短が影響し,実際の日成長率を反映していないケースも考えられている.管理効果をさらに向上させるためにはより正確なイカナゴ仔稚魚の成長解析が必要となってきている.
- 仔稚魚の成長解析には普通,耳石に形成される輪紋が用いられているが,その前提として飼育日数と輪紋数との関係などから輪紋形成の日周性が確認される必要がある.イカナゴ仔稚魚の耳石にも明瞭な輪紋が確認されるが,その日周性は未だ確認されていない.そこで,本研究ではイカナゴ仔稚魚の耳石輪紋形成の日周性について確認を行った.
- [成果の内容・特徴]
- 卵から飼育を行い,ふ化後の飼育日数と耳石輪紋数(ふ化輪から耳石外縁までの輪紋数)を比較した結果では,両者がほぼ一致した.
- 耳石にアリザリンコンプレキソンを用いて2回のマーキングを行い,その間の飼育日数(8日間)と2本の標識の間の輪紋数を比較した結果,両者は一致した.
以上からイカナゴ耳石(扁平石)における輪紋数は,ふ化後の日数として換算できることが明らかになった.
- 耳石輪紋を用いて仔稚魚の成長を逆算する方法の一つであるBiological Intercept法を用いて,卵から飼育したイカナゴ仔魚の成長を逆算したところ,飼育期間中に定期的に行ったサンプリングから得られた平均全長の推移をよく表す結果となった.
- [成果の活用面・留意点]
- 輪紋数を計数することにより,天然海域におけるイカナゴ仔魚について,ふ化日の推定による産卵群の分離や,輪紋間隔の計測により個体毎に成長解析が可能となった.しかしながら,ふ化輪から20μmの範囲における輪紋数の観察には電子顕微鏡にが必要であり,これを省力化するための換算式を用いる方法なども考えられているが,年別やふ化時期による成長量の違いなどを検討していく必要がある.
[具体的データ]
表1 ふ化後日数と輪紋数の比較
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図1 飼育仔魚の成長と逆算した成長
[その他]
研究課題名:イカナゴ仔稚魚における耳石輪紋形成の日周性の確認
予算区分 :水産振興
研究期間 :平成11年度
研究担当者:大美博昭・日下部敬之
発表論文等: