大型餌料を用いたマダコの種苗生産
- [要約]
- マダコはふ化後1ヶ月浮遊生活し、その後沈着する。試験では浮遊期マダコの安定生産と沈着直前の餌料の検索を行い、前者については適正飼育環境を、後者については人工培養可能な餌料を明らかにした。
兵庫県立水産試験場増殖部
[連絡先] 078-941-8601
[推進会議]瀬戸内海ブロック
[専門] 種苗生産
[対象] マダコ
[分類] 研究
- [背景・ねらい]
- マダコは瀬戸内海の重要魚種のひとつであるが、寒波等による資源変動が大きく、漁獲安定のためのマダコの種苗放流が切に願われてきた。本県では昭和30年代に日本で初めて、マダコの種苗生産に成功したが、天然で採捕した餌料を用いて行っていたため、マダコの量産には至らなかった。その後、研究は中断していたが、漁業者からのマダコ種苗放流の要望も強く、また、周辺技術の進歩もあり、量産を目的とした研究を行うこととなった。
- [成果の内容・特徴]
- 1)産卵、孵化
産卵は摂餌の停止により推定可能で、産卵数は10万粒程度、孵化まで25日かかり、 孵化継続期間は20日程度であることが明らかになった。
- 2)浮遊期マダコの飼育(孵化〜14日)
飼育水に植物プランクトンを添加する必要があること、孵化ダコには1.5mm程度に 養成した後、栄養強化したアルテミアを1日に複数回投餌すること、などにより孵化 ダコの生残率が向上することが明らかになった。また、これらの手法により浮遊期生 残率は80%程度で安定するようになった。
- 3)沈着移行期以降の飼育(孵化後14〜40日)
養成したアルテミア単一餌料では生残および成長が著しく悪く、大型餌料であるニホ ンアミを併用することにより生残、成長が改善されることを明らかにした。
- [成果の活用面・留意点]
- ニホンアミは現在の水準で培養可能な最低限の餌料であり、さらに適正な餌料を開発し大量培養技術の開発を行う必要がある。
[具体的データ]
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ニホンアミ(全長約1cm)
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アルテミア投与区 ニホンアミ投与区
[その他]
研究課題名:マダコ種苗の量産技術並びに放流技術開発に関する研究
予算区分 :試験研究調査費
研究期間 :平成5年〜9年度
研究担当者:安信秀樹、原田和弘、山本 強、杉野雅彦
発表論文等:平成7年度タコ研究会にて発表、兵庫県立水産試験場研究報告第34号