マアナゴ着底期稚魚の棲息場所の解明
- [要約]
- マアナゴはなじみ深い魚であるが、ウナギと同様、生態はナゾに包まれている。特に産卵場は全く不明である。また、着底期稚魚の生息場も不明である。マアナゴの資源管理を行うためには、前提条件として生態の解明は不可欠である。今回、全国に先駆けてこれまで不明であった着底期稚魚の生息場所を発見し、採集に成功した。
兵庫県立水産試験場資源部
[連絡先] 078-941-8601
[推進会議]瀬戸内海ブロック
[専門] 資源生態
[対象] マアナゴ
[分類] 研究
- [背景・ねらい]
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兵庫県のマアナゴ漁獲量は全国第1位にあり、その加工品である兵庫の焼きアナゴは高い知名度を
持つブランド商品となっている。しかし、平成6年以後漁獲量は減少傾向にある。
不明であった着底期稚魚の生息場所を発見する。
- [成果の内容・特徴]
- 採集:目合いの細かい底びき網を用い、平成11年6月4日と18日に明石市地先の水深10〜20mの海域で
調査船による試験操業を行った。その結果、日没後の操業で合計54尾の稚アナゴの採集に成功した。一
方、昼間の操業では採集されなかった。この結果から、稚アナゴは、昼間は石や貝殻の陰に隠れてお
り、日没後、摂餌のため活発に活動すると推察された。
- 稚魚サイズと食性:採集された稚魚の全長は73.8〜123.4mm(平均99.4mm)であった。このサイズの稚魚は変態完了から漁獲加入までのものであり、これまで生態的知見が空白となっていた時期のものである。食性は分析途中であるが、端脚目のヨコエビ類を主に食べていることが明らかになりつつある。
- 棲息場の底質:稚魚が最も多く採集された地点は粒子径10mm以上の小石の含有率が最も高く、貝殻
が27.9%含まれていた。貝殻はウチムラサキがほとんどを占めていた。一方、稚魚が採集されなかった
地点では小石、貝殻は全く採集されず、粒子径0.25〜0.5mmの砂が大部分を占めた。この結果から、マ
アナゴ稚魚の生息域は底質性状に強く依存していることが示唆された。
- [成果の活用面・留意点]
- 稚魚の生息域は明石市地先だけには限らないと考えられるため、順次生息域を明らかにする。ま
た、生活史の空白を埋める作業として食性を明らかにする。
[具体的データ]



[その他]
研究課題名:複合的資源管理型漁業促進対策事業
予算区分 :資源培養管理対策推進事業費
研究期間 :平成11年度(平成10〜14年度)
研究担当者:反田 實
発表論文等:以下の題名で日本水産学会に発表および投稿予定
着定期稚アナゴの分布と食性