メバルの大量生産技術
- [要約]
- 平成6年度からメバルの種苗生産技術開発に着手し,平成8年度から25トン大型水槽での量産技術開発を開始した。平成8年〜10年度にかけて20mm以上の種苗18〜31万尾を生産し安定した量産が可能となった。本年度は10年度に生産した種苗のうち,10万尾を中間育成し,6cmサイズの放流種苗を8万尾を取り上げ,うち5万尾に腹鰭切除標識を施した後,生野島保護水面に放流した。
広島県水産試験場
[連絡先] 0823-51-2171
[推進会議]瀬戸内海ブロック
[専門] 生物生産
[対象] メバル
[分類] 研究
- [背景・ねらい]
- メバルは釣りや食材として人気が高く,沿岸部の岩礁帯や魚礁等の海中構築物に定住する性質を持っている。県内には約1万台のカキ筏が点在しているがこれが有効な浮き魚礁ととして利用できるため,本種は本件特有の地先定着型の栽培漁業対象種として期待され,種苗生産,中間育成技術及び放流技術の開発が望まれている
- [成果の内容・特徴]
- 大量採仔の成功:種苗生産した満3歳魚を親魚とした結果,人工飼育環境に順応した親魚を大量に確保でき,1日10万尾以上の採仔が可能となった。
- 種苗生産,中間育成技術の開発:DHAの強化したワム−アルテミア(天然プランクトン,配合飼料)の餌料系列や加温飼育,イクチオボド寄生対策等の開発によって,平成10年までに約90日間の飼育で20mm種苗20万尾の生産が可能となった。
- 適正給餌と選別の強化:本種は30mm以下の小型魚は配合飼料に非常につきにくく,20mmサイズの沖出しでは中間育成の歩留まりが25%以下であった。そこで,10mm前後からこまめに選別し,小型魚にはアルテミアを,大型魚には配合飼料を与え,沖出しサイズを大型化した。その結果,中間育成の歩留まりが78.8%と飛躍的に向上した。
- 配合餌料の開発:沈降速度を緩やかにしたメバル用の配合飼料の開発を行い。摂餌サイズを30mmから27mmへと小型化することに成功した。
- [成果の活用面・留意点]
- メバル配合飼料の改良により,配合飼料への餌付サイズを25mmとし,沖出しサイズを小型化することによって,生物餌料による飼育期間を短縮化させ,生産の省力化を図る。
- 種苗生産時期に選別によって,かなりの成長不良魚(ビリ)が発生し,処分対象となっている。このような無駄を解消し,生産効率を高めるため,ビリの発生率を減少させるように親魚の育種面,飼育管理面の両方から検討を行う。
- カキ筏が多く点在する広島湾に将来100万尾放流を目指し,広島湾をメバルの里にする。
[具体的データ]
![](./feis1119-1.jpg)
上段左:産仔魚,上段右:日令30日,下段左:日令120日,下段右:標識装着
表1 種苗生産試験結果
[その他]
研究課題名:メバル放流技術開発事業
予算区分 :国補
研究期間 :平成10年度(平成8年〜11年)
研究担当者:相田 聡
発表論文等:メバルのの採仔の基礎的知見について。栽培技研,27号,2巻,1999。