食用海藻藻場造成試験
- [要約]
- 海藻の増殖を目的とした築磯において、食用として有用な海藻であるヒジキおよびテングサ群落を短時間に造成し、また、これら海藻を安定生産するため、スポアバッグによる造成手法を開発した。
愛媛県中予水産試験場 企画開発室
[連絡先] 089-983-5378
[推進会議]瀬戸内海ブロック
[専門] 増養殖技術
[対象] 藻類
[分類] 普及
- [背景・ねらい]
- 本県は全国有数のヒジキおよびテングサの生産県となっており、これらの藻類を増殖させる目的で、築磯が行われている。しかし、海藻が自然状態で群落を形成するまでには長い時間がかかるうえ、生産力が低く群落形成に至らないものもみうけられる。そこで、ヒジキおよびテングサ群落を短時間に造成し、安定生産するための増殖手法を開発する。
- [成果の内容・特徴]
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〈ヒジキ場造成〉
- 6、7月にヒジキ母藻を採取し、スポアバッグ(図1)に詰め、九十九島、釣島、興居島黒埼の築磯にぞれぞれ3〜5m間隔で設置した。
- 8月に卵が放出され、その後、潮間帯に設置したスポアバッグ周辺1〜1.5m内において、ヒジキが着生した(図2)。さらに、その後のモニタリング調査により、ヒジキ群落の形成を確認した。
〈テングサ場造成〉
- 8、9月にテングサ母藻を採取し、スポアバッグに詰め、神崎の築磯に設置した。
- 9月下旬に胞子が放出され、水深2〜3m付近においてテングサが生長した(図3)。さらに、その後のモニタリング調査により、テングサ群落の形成を確認した。
- [成果の活用面・留意点]
- スポア−バッグ法により迅速、簡易にヒジキおよびテングサ場を造成することが可能となった。この手法は漁業者自らが実践することにより効果が拡大することが期待できるので、今後、漁業者に対する普及が重要となる。なお、実施にあたっては以下の点に注意する必要がある。
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〈ヒジキ場造成〉
- 7月末から8月上旬に受精卵の放出が行われるので、それ以前に母藻を採取する。
- 潮流が比較的速い岩礁域の潮間帯で造成を行う。
- ウミトラノオが繁茂している場合は、競合を避けるため、これを除藻する。
〈テングサ場造成〉
- おおよそ9月に成熟するが、年、場所による変動がみられるので、成熟を確認してから母 藻を採取する。
- 潮流が速い岩礁域の水深2〜3m付近に設置する。
[具体的データ]
![](./feis1123-1.gif)
図1 スポアバック
![](./feis1123-2.gif)
図2 ヒジキ主茎長
![](./feis1123-1.gif)
図3 テングサ葉長
[その他]
研究課題名:藻場造成技術開発試験
予算区分 :水産試験場費
研究期間 :8〜10
研究担当者:平田信治,関谷真一,喜安宏能
発表論文等:食用海藻「ヒジキ」の藻場造成,愛媛農林水産試験場だより,第54号,1999