豊前海における放流クルマエビの移動と成長
- [要約]
- 豊前海福岡県海域における放流クルマエビの移動と成長、および放流効果を明らかにする目的でクルマエビ標識放流を行った。
- 平均体重2.5gで放流したエビは、1ヶ月後には13g、2ヶ月後には26gに成長し、早期に放流すれば放流年内に漁獲対象となることが分かった。
- 放流エビは、放流後2ヶ月までは放流点付近にとどまり、その後時間の経過とともに福岡県沿岸から山口県沿岸、大分県国東半島周辺域までその分布域を広げることが分かった。放流エビは建網、小型定置網および小型底びき網など様々な漁業種で漁獲される。ただ、放流エビの回収率は0.4%と低かった。
福岡県水産海洋技術センター豊前海研究所
[連絡先] 09799-82-2151
[推進会議]瀬戸内海ブロック
[専門] 漁業生産
[対象] くるまえび
[分類] 調査
- [背景・ねらい]
- 豊前海福岡県海域では昭和39年からクルマエビの種苗放流を行っており、現在では年間500万尾の大型種苗を放流し、80トン前後のクルマエビを安定して漁獲している。放流効果については漁業者自ら実感しているものの、放流エビの回収率や効果の範囲が数値的に把握されていない。クルマエビ資源の共同管理に関する体制の整備や受益者負担に関する検討資料にするため、本調査を行った。
- [成果の内容・特徴]
- 放流エビの移動分布と成長を明らかにするため、体長58mmの稚エビ77,000尾に標識を装着し、行橋市蓑島地先で放流した。放流日時は平成10年7月15〜16日である。
- 成長
平均体長58mm、体重2.5gで標識放流したクルマエビは、1ヶ月後には体長113mm、体重
13gに、2ヶ月後には体長133mm、体重26gに成長した。雌雄に成長差がみられ、雌のほうが成長は良かった。6〜8月に大型種苗(体長30mm)を放流すれば、年内に漁獲対象となると推察される。
- 移動・分布
7月に蓑島地先で放流したエビは、8月頃までは放流点付近に分布していたが、9月には灘中央部から国東半島北岸まで分布域が広がった。11月には国東半島東岸でも再捕された。福岡県地先で放流したエビは、福岡県沿岸から山口県沿岸、大分県の国東半島周辺まで移動・分布することが分かった。ただ、放流後5ヶ月を経過しても放流点付近に分布するエビもみられた。
- 漁獲
放流エビは小型底びき網、さし網および小型定置網で再捕されており、その割合はさし網による再捕尾数が最も多く全体の51%、小型底びき網が44%、小型定置網は5%であった。
放流エビは主にさし網と小型底びき網で漁獲されると推察される。
再捕尾数は264尾であり、その約90%が福岡県所属の漁船によるものであった。
- [成果の活用面・留意点]
- クルマエビ資源の共同管理、クルマエビ栽培漁業推進のための基礎資料とする。
再捕率が0.4%と低く、これについては今後の検討が必要である。
[具体的データ]
図2 標識クルマエビの結果日数と移動距離
図3 標識クルマエビの成長
[その他]
研究課題名:放流資源共同管理型栽培漁業推進事業
予算区分 :水産振興
研究期間 :平成8〜10年度
研究担当者:寺井千尋
発表論文等:未発表