養殖ブリの低水温期におけるEPの適正給餌による経済性
- [要約]
- ブリのEPに対する消化性と冬期のEPの適正給餌方法を検討した。その結果、EPの消化性は生餌に比べ低水温期に低くかったが、適正な給餌頻度、給餌量、飼料組成のEPのの使用により、生餌が50円/kg以上の時にはEPの方が経済的なことを明らかにした。
大分県海洋水産研究センター 養殖環境部
[連絡先] 0972-32-2155
[推進会議]瀬戸内海ブロック
[専門] 魚類栄養
[対象] ブリ
[分類] 普及
- [背景・ねらい]
- 海面養殖漁業でも配合飼料化への転換が迫られているが、養殖ブリの場合、低水温期に配合飼料では生餌主体給餌に比べ飼育成績が劣る傾向があり、養殖現場では容易に転換できない現状がある。そこで、生餌と配合飼料のタンパク質消化性を検討するとともに、低水温期のEPの適正給餌方法を給餌頻度、給餌量、飼料組成から検討した。
- [成果の内容・特徴]
- (1)EP(固形飼料)、SMP(粉末飼料)、OMP(生餌主体餌料)について、胃食塊量とタンパク質消化率の食後変化から算出した累積タンパク質消化率が、OMPでは季節を問わず高値だったのに対し、水温の低下に伴いEPでは僅かにSMPでは著しく値が低下し、これら配合飼料に対するブリのタンパク質消化性が水温の低下に伴い低下することが示唆された(図1)。
- (2)飼料組成の異なるEPを用いてブリ当才魚の冬期飼育試験を行った。給餌頻度を1回/週から5回/週に設定したところ、いずれの組成のEPでも飼料効率は3回/週給餌区が優れ、低水温期のEPの適正給餌頻度は3回/週と考えられた。
- (3)飼育試験の結果から日間エネルギー摂取率と日間増重率の関係を求めたところ、30-35kcal/kgBW/日付近を境に、それ以上ではエネルギー摂取率(=給餌量)の割に増重が得られないことが明らかになった(図2)。これは@の、水温の低下に伴うEPの消化性の限界がこの付近にあるためと思われた。
- (4)また図2より、粗タンパク質量(CP)が42-46%で粗脂肪量(CL)が20-28%の組成のEPに比べ、CP39%・CL32%のEPは明らかに増重率が低位でCL過剰の影響が認められた。従って、低水温期のEPの適正飼料組成はCP42%・CL28%付近と考えられた。
- (5)CP42%・CL28%のEPを30-35kcal/kgBW/日・3回/週給餌するとき1.4-1.6%/BW/回が適正給餌量であり、この時の日間増重率は約0.3%/日、増肉係数は約2.3が期待される。同期に生餌の場合、同順に0.4-0.5%/日、8.5-9が期待されるが、EPの単価は190円/kg程度なので、生餌が50円/kg以上の時には増肉コストはEPの方が有利であることを明らかにした。
- [成果の活用面・留意点]
- (1)一連の飼育試験を冬期の平均水温14-16℃の場所で行っているので、この水温帯意外の地域では適正給餌量等の値が異なっていることが予想される。
- (2)増肉コストから経済性を検討したが、図1や(5)のようにEPは生餌に成長で劣っている面もあることを認識しておかなければならない。
[具体的データ]
図1.ブリ当才魚におけるEP、SMPおよびOMPの累積タンパク質消化率の季節変化
図2.EP給餌における冬期の日間エネルギー摂取率と日間増重率の関係
[その他]
研究課題名:ブリ養殖における配合飼料の利用に関する研究
予算区分 :県単、国庫委託(高品質配合飼料開発事業)
研究期間 :平成10年度(研究期間:平成8-10年度)
研究担当者:佐藤公一
発表論文等:ブリ若齢魚の配合飼料および生餌主体餌料のタンパク質消化率に及ぼす水温の影響、日本水産学会誌、66(2)、243-248、2000.