瀬戸内海東部海域におけるクルマエビ大型種苗の放流効果


[要約]
 兵庫、岡山、香川、徳島、和歌山、大阪の6府県が共同して、平成9及び10年の2回、それぞれ約18万尾のクルマエビ(体長50mmサイズ)の尾肢切除による標識放流を本県の赤穂地先で行った。各府県の放流効果調査の結果、39千尾が回収されたと見積もられ、大型種苗を放流することで20%以上の回収率が期待できることがわかった。
兵庫県立水産試験場資源部(代表取りまとめ)
大阪府、和歌山県、岡山県、香川県、徳島県、日栽協
[連絡先] 078-941-8601
[推進会議]  瀬戸内海ブロック水産業関係研究試験推進会議
[専門] 資源生態
[対象] くるまえび
[分類] 研究

[背景・ねらい]
 生息範囲が複数県海域にまたがる回遊性魚種における栽培漁業推進のため、クルマエビを指標として、瀬戸内海東部海域の1地点(赤穂地先)から大量標識放流を行い、その放流効果を把握することを目的とする。

[成果の内容・特徴] 

  1. 大量標識放流:中間育成を経た体長50mmサイズのクルマエビ種苗に対し尾肢切除による標識を行い、平成9及び10年の2回、それぞれ約18万尾を放流した。その後の追跡調査により368尾の標識クルマエビが再捕された。この結果に基づいて瀬戸内海東部海域全体での回収率を推定し、放流効果を検討した。
  2. 標識クルマエビの再捕時期と再捕場所から、時間の経過とともに播磨灘南部、大阪湾、紀伊水道へと広域に移動分散することがわかったが、ほとんどは放流地周辺漁場で再捕されており、放流効果の及ぶ範囲は主に放流地周辺の漁場であることが示唆された。
  3. 標識クルマエビの再捕時期と体長組成から、天然海域における放流クルマエビの成長は非常に早いことがわかった。7、8月に体長50mmで放流すると、10月には体長150mm程度の漁獲サイズにまで成長することがわかった。
  4. 平成10年に放流した約18万尾の標識クルマエビは、瀬戸内海東部海域全体で約39千尾が回収されたと推定することができた。このことから、中間育成を経た大型種苗を放流することで20%以上の回収率が期待できることがわかった。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本調査で得られた結果をそのまま現状の30mmサイズの放流事業に当てはめることはできないが、今後は大型種苗の放流を念頭に入れたクルマエビ放流事業の推進方策を検討していく必要がある。

[具体的データ]


図1 標識クルマエビの海域別再捕尾数


図2 標識クルマエビの再捕時期別体長組成
  (平成10年度、兵庫県再捕分のみ)


図3 海域別回収尾数の推定(平成10年度)


[その他]
研究課題名:放流資源共同管理型栽培漁業推進調査事業
予算区分: 予算区分:栽培漁業推進調査事業費
研究期間: 研究期間:平成12年度(平成8〜12年度)
研究担当者:谷田 圭亮
発表論文等:未定