養殖ノリの色落ち対策研究


[要約]
 ノリ養殖業に多大な被害を及ぼす色落ち現象について、漁場環境面からその発生予察手法を確立するため、Eucampia zodiacusの各環境要因に対する増殖応答を明らかにするとともに、低栄養塩水塊の移動と気象要因との関連性を解析した。また、養殖技術面の対策については、のりの生長速度と色落ちの進行速度との関係に着目し、低照度条件化において色落ちの進行が遅れることを確認した。
兵庫県立水産試験場増殖部
[連絡先]  (078)941-8601
[推進会議]  瀬戸内海ブロック水産業関係研究試験推進会議
[専門] 養殖
[対象] のり
[分類] 研究

[背景・ねらい]
 本県のノリ養殖業は内海漁業生産額の40%余りを占める重要な基幹漁業である。しかし、近年は2〜3月になると栄養塩濃度の大幅な低下にともなう色落ちにより、製品の品質が低下する傾向にある。特に、平成8年度漁期にはその被害範囲が播磨灘の全漁場に達し、生産量も前年と比較して約10%減少した。そこで、本研究ではその対策法確立のため、漁場環境面から発生予察手法を検討するとともに、養殖技術面での対策を検討する。

[成果の内容・特徴] 

色落ち発生予察手法に関する検討 養殖技術面での対策の検討

[成果の活用面・留意点]

 色落ち発生予察手法については、今回のE. zodiacusに関する実験結果と、今後Coscinodiscus wailesiiも含め、栄養塩類に対する増殖応答を解明することにより、現場海域における増殖状況が予測でき、栄養塩濃度の低下状況も予察できると考えられる。また、低栄養塩水塊の移動と気象要因と解析結果から、色落ち発生、回復時期について短期的な予測が可能であるが、より正確に予測するためには現場海域におけるモニタリング調査頻度を高める必要がある。
 一方、養殖技術面の対策については、今回の結果は養殖水深や冷凍網出庫時期の検討材料になる。ただし、その効果を把握するためには養殖現場での実証試験が必要となる。

[具体的データ]


図1 平成12年,東播地先漁場における低栄養塩水塊と色落ちの発生状況

表1 異なる照度条件下における色落ちの進行とノリの生長
照度 色調低下率(%) 葉体面積増加率(%)
5,000lux 91 160
3,000lux 92 154
1,000lux 71 143


[その他]
研究課題名:養殖ノリの色落ち対策研究
予算区分:試験研究調査費
研究期間:平成10年度〜12年度
研究担当者:岡本繁好・堀豊・西川哲也・二羽恭介・水田 章・谷田圭亮
発表論文等: