岡山県の河川におけるアユ冷水病の感染経路の推定


[要約]
 内水面漁業の重要な資源であるアユの冷水病対策として,冷水病菌の保菌検査や河川における発生実態の調査により,放流種苗や河川内のアユ等の保菌状況及び冷水病の発生状況を明らかにし,感染経路を推定した。県内河川で発生する冷水病の感染源としては,保菌種苗の放流のほかに,解禁後に持ち込まれる友アユ等が感染源として疑われた。
岡山県水産試験場魚病指導センター
[連絡先] 0868-28-4558
[推進会議]  瀬戸内海ブロック水産業関係研究試験推進会議
[専門] 病理
[対象] あゆ
[分類] 研究

[背景・ねらい]
 近年,アユの冷水病は岡山をはじめ全国の養殖場や河川で多発し,内水面漁業に甚大な被害を及ぼしている。しかし,この病害については不明な点が極めて多く,有効な防除対策をとれていないのが現状である。そこで,大学,国の研究機関や全国の水産試験場と連携を図りながら,岡山県内の河川における冷水病の発生実態を把握する。

[成果の内容・特徴] 

  1. 保菌検査方法
    冷水病菌 Flavobacterium psychrophilum の保菌検査方法として,腎臓からの分離培養法が有効であることを確認した。
  2. 放流種苗及び河川アユの保菌検査 表1
    県内人工産の放流種苗から冷水病菌は検出されなかった。一方,放流時の湖産種苗はほとんどの群が冷水病菌を保菌しており,これが河川で発生する冷水病の感染源の一つと考えられた。また,河川内の産卵親魚からも検出されており,冷水病菌は大半の河川で少なくとも5月〜11月頃まで存在すると思われる。
  3. 河川での発生状況 表2
     1)1998年から2000年の間に,冷水病の発生を12件確認した。
    2)初発の確認時期は,河川水温が14.4〜26.4℃(主に15〜21℃)の5月中旬〜7月中旬で,岡山県の三大水系の全てで確認した。
    3)12件のうち湖産種苗が放流されている8件すべてで解禁前に冷水病が発生していることから,感染源は保菌放流種苗である可能性が高いと考えられた。
    4)12件のうち非保菌アユのみを放流したと考えられる4件では,釣り解禁日当初は豊漁であったが,その後冷水病が発生し不漁となったことから,感染源は解禁後に持ち込まれた友アユや汚染区域で釣ったアユ等の可能性が最も疑われた。
    5)1996,'97,'98年に冷水病が発生した独立河川に非保菌アユを単独放流した結果,冷水病は確認されず,豊漁のうちに終漁した。
    6)以上の結果,現時点では岡山県の河川における主要な感染源は保菌アユの放流あるいは友アユと推察され,感染源を絶つ有効な手段を検討することにより,場所によっては冷水病の発生がおさえられうると考えられた。ただし,これら以外の感染源が存在するか否かは今後の調査課題である。

[成果の活用面・留意点]

 全国的組織での研究や本県のアユ冷水病対策研究成果等を取りまとめ,本県に即したアユ冷水病 防除対策マニュアルを作成・普及し,河川における冷水病の軽減と防止策に対する提言を行う。

[具体的データ]

表1 冷水病菌の保菌状況調査のまとめ

表2 河川冷水病の発生状況調査のまとめ


[その他]
研究課題名:アユの冷水病対策研究事業
予算区分:県単独予算
研究期間:平成11年〜平成13年
研究担当者:増成伸文,難波洋平,植木範行
発表論文等: