カキ生産量の減少要因の解明


 本県のカキ生産量は過去10年間減少傾向を示しているにもかかわらず,クロロフィルa量には,それほど大きな変動はみられなかった。また,摂餌実験の結果,3年カキは餌料効率が悪いことが明らかとなった。これらのことから,3年カキ養殖が漁場の過密化を招き,成長不良やへい死等の原因の一つになっていることが考えられた。 [要約]
 
広島県水産試験場 生産部・資源環境部
[連絡先] 0823-51-2171
[推進会議]  瀬戸内海ブロック水産業関係研究試験推進会議
[専門] 増養殖技術
[対象] かき
[分類] 研究

[背景・ねらい]
 広島湾の養殖カキむき身生産量は,かつては約3万トンを維持していたが,平成4年度以降,減少傾向を示し,平成10年には1.7万トンまで減少したものの,平成11年には2万トンまで回復した。
 この減少の外的要因として,貝毒,赤潮,台風による被害や埋め立てによる漁場消滅等があった。しかし,出荷までに産卵期を二度経験する3年養殖カキ(いわゆるノコシカキ)の生産がこの間に定着し,養殖カキの生産体制が大きく変化した。このため,養殖カキの現存量は著しく増大し,そのことが餌料不足を誘引し,養殖カキの成長を更に低下させるという悪循環に陥っていることが懸念される。
 そこで,カキの主餌料である植物プランクトン量の推移をクロロフィルa量を指標として,その長期的な変動傾向と生産量との関係,カキの大きさと濾過水量,増重量等について調査し,今後のカキ養殖生産方法のあり方について検討した。

[成果の内容・特徴] 

  1. 広島県のカキ養殖海域における上層(10m以浅)クロロフィルa量の分布をみると,カキが見入り成長する10〜3月までの鉛直混合期(以下循環期とする)では,クロロフィルa量は沿岸域に多く,沖合部に行くほど少なくなる傾向が見られた(図1)。
  2. 今回の調査と昭和47年以降の浅海定線調査結果から,共通の定点における表層0mのクロロフィルa量の長期変動をみると,循環期におけるクロロフィルa量は,近年のカキ生産量減少に対応するような減少傾向を示さなかった(図2)
  3. 3年養殖カキでは,出荷前の産卵期に大量産卵し,産卵に伴って生肉重量の減量とへい死の増大を招き(図3),海域の生産力の有効利用面から問題である。また,カキは体重に比例して濾過水量すなわち摂餌量は増大する傾向があるが、増重量はカキの重量によらずほぼ一定であり,大きなカキの養殖は餌料効率面でも問題であることが示唆された。
  4. 3年カキ養殖の増加が,漁場内のカキ現存量の増大,カキ漁場の過密化を引き起こし,成育不良・養殖期間の延長という悪循環に陥って,生産量の低下させる要因となっていると考察した。

[成果の活用面・留意点]

  1. 生産量減少の原因の1つは,過度の収穫量を期待した過密養殖によるところが大きく,今後は品質確保を優先させた養殖技術の普及につとめる。
  2. 3年カキの弊害を説き,その削減につとめる。

[具体的データ]


[その他]
研究課題名:かき養殖体系再構築技術開発事業
予算区分 :国捕
研究期間 :10年〜12年
研究担当者:赤繁 悟,平田 靖
発表論文等: