ミルクイガイ種苗生産方式の簡略化と自動化


[要約]
 ミルクイガイの種苗生産過程における着底期の飼育方式の簡略化自動化を試みた結果、問題なく種苗生産できることがわかった。この生産方式によれば、省力化された大量生産が可能であった。また、この方式で他の二枚貝の種苗生産も可能であった。
山口県水産研究センター 内海研究部
[連絡先] 083‐984‐2116
[推進会議]  瀬戸内海ブロック水産業関係研究試験推進会議
[専門] 増養殖技術
[対象] 他の二枚貝
[分類] 研究

[背景・ねらい]
 多くの二枚貝類の漁獲量は近年減少傾向にあり、それらの増殖技術開発が急がれている。その一環として、ミルクイガイの大量生産および生産過程の省力化を目的とした種苗生産方式の簡略化、および、着底期飼育の自動化に関する技術開発試験を行った。

[成果の内容・特徴] 

  1. ミルクイガイの種苗生産方式の簡略化
     ミルクイガイは飼育環境に敏感な種類とされており、従来、着底期はアルテミアふ化槽による二重底砂床水槽(図1)で種苗生産を行ってきた。しかし、大量生産を行う場合、水槽構造の簡素化が不可欠で、また、成長が早く成長差も大きいため、サイズ選別飼育が有効であることからも取り上げ、および水槽の洗浄が簡単な簡素な水槽が望ましい。そこで、簡略化した水槽(図2)で飼育水の流動を考慮した飼育を行ったところ、問題なく飼育できることが判った。
  2. 着底期以降の飼育の自動化
     従来、ミルクイガイの飼育は着底期以降も浮遊期と同様に換水、給水、給餌を手作業により行ってきた。しかし、大量生産を行う場合、水槽の数も多くなることから、作業過程は単純であるものの、作業時間を要する。これらの過程を自動化することにより大量生産時の省力化を図った結果、自動飼育ができるようになった。(図3)
  3. 当方式による他の二枚貝の種苗生産
     @、Aの方式でアサリおよびウチムラサキガイの種苗生産を行った結果、ミルクイガイと同様に問題なく飼育できることが判った。

[成果の活用面・留意点]

@の方式は山口県内海栽培漁業センターでもすでに試験生産において行われており、成果をあげている。@、Aの方式を組み合わせることにより、種苗生産現場での大量生産と省力化が可能となる。
なお、Aの方式に餌料の連続培養装置を導入すれば、完全自動化が可能である。

[具体的データ]


図1.従来の着底期二枚貝の飼育槽(200L)


図2.着底期二枚貝の飼育槽(500〜1,000L)


図1.着底期二枚貝の自動飼育槽


[その他]
研究期間 :平成11〜12年度
研究担当者:松野 進・中野義久(現、外海研究部)・角田信孝(現、外海第2栽培漁業センター)
発表論文等:二枚貝種苗生産時の着底期の自動飼育、平成11年度山口県水産研究センター報告(予定)