近赤外線照射によるアコヤガイの非破壊肉質評価


[要約]
 アコヤガイ肉質評価の方法として、貝柱のグリコーゲン量や赤変度合い、血清タンパク質含量および貝肉に占める水分の割合等が用いられているが、評価に際して貝を殺す必要や分析操作が複雑で時間がかかることから、アコヤガイに近赤外線を照射して、非破壊でかつ迅速にアコヤガイの肉質を評価する方法を開発した。
愛媛県水産試験場・増殖室
[連絡先] 0895-29-0236
[推進会議]  瀬戸内海ブロック水産業関係研究試験推進会議
[専門] 品質評価
[対象] あこやがい
[分類] 普及

[背景・ねらい]
 真珠母貝(アコヤガイ)は貝重量を基にして価格が設定され、一般に取引されているが、その際、肉質についてはあまり考慮されていないのが実情である。真珠母貝の品質を向上させるためには、肉質が価格に反映されることが必要である。そのため、果実で行われている近赤外線による非破壊評価法を参考にして、肉質の指標となるグリコーゲン量、血清タンパク質量等を簡易に測定できる方法の開発を行ってきた。その結果、アコヤガイに近赤外線を照射して非破壊でかつ迅速にアコヤガイの肉質を評価する方法を開発したものである。

[成果の内容・特徴] 

  1. 図1の近赤外分光光度計(FANTEC社製 Marine-100)を用いて,個々のアコヤガイについて650〜1100nmの透過スペクトル(図2)を収集するとともに、従来の方法で肉質分析を行い、それぞれ求めた貝柱の測色色素計によるa値・b値、グリコーゲン量、ドリップ値((湿肉重量−脱水貝肉重量)/脱水貝肉重量)との重回帰分析を行い、検量線を作成し各成分を推定した。
  2. 従来の方法によって得られた実測値と近赤外分光光度計から得られた推定値には、グリコーゲン量及びa値・b値はr=0.74〜0.90、ドリップ値はr=0.64の相関が得られた(図3〜6)。
  3. 以上の結果から、本装置は貝柱の赤変度a値・b値、グリコーゲン量、ドリップ値を同時に推定することができ、非破壊による肉質評価が可能となった。

[成果の活用面・留意点]

 今後は、個体の大きさや種類別に検量線を作成することによって、肉質評価の精度を さらに高め、母貝の品質評価手法として現場に普及するとともに、優良な形質を持つ親貝を選別する手段として活用することとしている。

[具体的データ]


図1 近赤外線分析装置              図2 透過スペクトルをパソコンによりリアルタイム処理し、瞬時に肉質を判定 


図3 近赤外線照射によるアコヤガイ非破壊肉質評価システム分析フロー図


図4 従来法との比較 分析精度は従来法と同等


[その他]
研究課題名:高品質アコヤガイ育成促進事業
予算区分 :高品質アコヤガイ育成促進事業
      持続的養殖推進対策フォローアップ事業
研究期間 :平成9年〜平成15年
研究担当者:西川 智、滝本真一
発表論文等:全真連技術研究会報 第13号 (1998)
      愛媛県農林水産試験場だより 第28巻第1号 (2000)
      水産技術 NO.12 (2001)