延縄式養殖施設を用いたカキ養殖試験


[要約]
 福岡県豊前海域において延縄式によるカキ養殖試験を行った。延縄式養殖は、従来のイカダ式と比べて付着基盤からのカキの脱落が少なく、成長も良く、単位面積当たりの収穫量はイカダ式のそれの約1.5倍であった。また波浪による施設の破損も見られなかった。延縄式によるカキ養殖はイカダ式養殖と比べて、成長、収穫量および費用対効果の面からみても良好であることが分かった。
福岡県水産海洋技術センター豊前海研究所
[連絡先] 0979-82-2151
[推進会議]  瀬戸内海ブロック水産業関係研究試験推進会議
[専門] 漁業生産
[対象] かき
[分類] 普及

[背景・ねらい]
 豊前海区のカキ養殖は、冬季の重要な漁業となりつつあるが、台風時の時化等による養殖施設の破損が問題となっている。特に南部のカキ養殖漁場は北部漁場と比較して北東ないしは東の風による波浪の影響を大きく受け、イカダの振動等による成長の遅れやイカダの破損等がたびたび発生している。このためカキ養殖着業者数が少なく、漁場が有効に利用されていない。そこで、宮城県等の外海波浪域で行われている延縄式養殖施設(図1)を用いて養殖試験を行い、豊前海でのその適性について検討を行った。

[成果の内容・特徴] 

豊前海におけるカキ漁場の有効利用を図るため、延縄式によるカキ養殖試験を行った。
@成長:10月時におけるカキ1個体当たりの平均重量は、延縄式の20.9gに対して、イカダ式では15.5gであり、延縄式の方が成長が良いことが分かった(表1)。さらに、付着基盤1個当たりの付着個数、重量ともにイカダ式に比べて延縄式の方が良く、重量で比較すると10月時で約2倍の差がみられた(表2)。また、延縄式施設への波浪による破損は見られなかった。
A費用対効果:イカダでの垂下ロープ1本当たりの平均的な収穫量は8kgであり、延縄の場合はその2倍の収量が見込まれる。その結果、施設面積当たりの収量は延縄64kg/m2に対してイカダ40kg/m2、施設費に係る費用で比較すると延縄107kg/万円に対してイカダは80kg/万円となり、延縄式による養殖はイカダ養殖と比べて、施設面積あるいは施設に要する費用面からみても良好であることが分かった。
以上のことから、延縄式によるカキ養殖は、イカダ式のそれと比べて成長、収穫量および費用対効果の面からも優れているといえる。

[成果の活用面・留意点]

 問題点としては、カキが成長して重量が重くなった場合、幹ロープがたわみ、垂下ロープ同士が接触し、カキの脱落等が見られる。今後、施設の改良を行うと同時に、漁業者への普及を図る。

[具体的データ]


図1 延縄式カキ養殖施設

 施設の幹ロープの長さは50mとし、10m間隔にブイ(浮力250kg)を設置し、ブイの両端 を幹ロープと連結した。幹ロープには50cm間隔で付着基盤を付けた垂下ロープを垂下した。その際、垂下ロープは幹ロープ1本当たり100本とした。

表1 カキ1個体当たりの平均重量の比較

表2 付着基盤1個当たりのカキ付着個数と重量(g)


[その他]
研究課題名:海面養殖高度化推進事業
予算区分 :水産振興
研究期間 :平成10〜11年度
研究担当者:中川浩一
発表論文等:未発表