麻痺性原因プランクトンGymnodinium catenatumによる小蒲江湾養殖ヒオウギガイの毒化機構


[要約]
 小蒲江湾の養殖ヒオウギガイを毒化させる麻痺性貝毒プランクトンG.catenatumは隣湾である猪串湾初期発生増殖域であり、本種が小蒲江湾で100cells/L以上確認されたときには、毒化の警戒が必要であることが判明した。
大分県海洋水産研究センター 養殖環境部
[連絡先] 0972-24-8939
[推進会議]  瀬戸内海ブロック水産業関係研究試験推進会議
[専門] 赤潮・貝毒
[対象] プランクトン
[分類] 研究

[背景・ねらい]
 大分県蒲江地区の小蒲江湾で養殖されているヒオウギガイは、G.catenatumによる毒化が度々みられ、出荷規制等の問題が起こっている。本研究では、G.catenatumによるヒオウギガイの毒化機構を解明し、毒化の早期予察手法を開発することを目的とした。

[成果の内容・特徴] 

  1. 猪串湾、小蒲江湾でのG.catenatum分布調査の結果、猪串湾では周年遊泳細胞が出現し、年に数回の増殖が確認された。(図1参照)
  2. ヒオウギガイ養殖場がある小蒲江湾でのG.catenatumの出現は、隣湾の猪串湾奥で本種の増殖が確認された後であった。(図2参照)
  3. 小蒲江湾でのG.catenatumの増殖は、猪串湾口部に高密度域が形成された後であった。(図2参照)
  4. 猪串湾、小蒲江湾でのG.catenatumシスト調査の結果、猪串湾奥の数点の底泥中から3〜6個/cm3のシストが確認された。
  5. 1.、2.、3.、4.の結果からG.catenatumの初期発生源及び増殖海域は猪串湾であると考えられた。
  6. G.catenatumによるヒオウギガイの毒化は鉛直平均細胞数20〜30cells/Lで徐々に進行し、約100cells/Lに達すると、急激に毒化する傾向があった。(図3参照)
  7. 小蒲江湾でG.catenatumの増加が確認されるときには、湾奥部(ヒオウギガイ養殖場付近)で最も細胞数が多くなる傾向があった。

[成果の活用面・留意点]

 G.catenatumによる小蒲江湾の養殖ヒオウギガイの毒化予察は、猪串湾のG.catenatumの動態を把握することによって、可能であると考えられる。
 また現在養殖場がある場所は、小蒲江湾の中でもG.catenatum細胞が濃密度になる傾向があるため、今後毒化の軽減をはかる際には漁場の検討及び移動が考えられた。

[具体的データ]


図1 猪串湾におけるG.catenatum細胞数の推移


図2 G.catenatum細胞数分布の推移


図3 小蒲江湾のG.catenatum細胞数とヒオウギガイ中腸腺PSP毒量の推移 


[その他]
研究課題名:貝類等毒化機構解明(猪串湾、小蒲江湾おけるヒオウギガイ毒化機構の解明と予察)
予算区分 :貝毒被害防止対策事業
研究期間 :平成9〜12年度
研究担当者:宮村 和良
発表論文等:なし