挟み込みによるヒジキの養殖


[要約]
 挟み込みによるヒジキの養殖試験を行った。天然種苗を秋季にロープに挟み込み海面で養殖したところ、翌年春から急激に生長し、養殖の可能性が示唆された。
大分県海洋水産研究センター浅海研究所
[連絡先] 0978-22-2405
[推進会議]  瀬戸内海ブロック水産業関係研究試験推進会議
[専門] 増養殖技術
[対象] 藻類
[分類] 普及

[背景・ねらい]
 近年の自然食品・健康食品志向に伴いヒジキの需要は増加しており、国内生産だけでは需要を満たすことができない状況にある。また、消費者の食品への意識の変化(産地表示や安全性、品質への要望)もあり、漁協や海藻加工業者から地元での増養殖への期待が高まっている。

[成果の内容・特徴] 

  1. 11月に、天然のヒジキ幼体を採取し(汚れが多く、乾燥すると著しく白くなるため利用されていない磯のもの)、太さ 10mmのロープに5cm間隔で数本ずつを挟み込んで、沿岸海域の水面に張り込んだ。
  2. 4月下旬から急激に生長し、5月上旬には平均で藻長約40cm、重量60gに達した(図1、2)。さらに6月には藻長1m、重量は100gを超え、7月には成熟も確認された。しかし、6月以降はイガイ類やワレカラ類などの付着が非常に多くなった。推定生産量は5月上旬でロープ1mあたり約3,500g(生)であった(図3)。
  3. 養殖したヒジキは天然ヒジキに比べると藻長は半分程度に過ぎないが、枝葉が濃密に茂る傾向にあり、重量は天然の1.5倍であった(図1、2)。
  4. ヒジキの増殖を目的とする場合には、成熟した藻体をロープごと当該海域の海底へ移動することで、漁場造成の母藻としての利用が考えられる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 種苗のヒジキ幼体採取に際しては、「汚れが多い、生長が悪い」などの理由で利用されていない磯のものを選ぶことが必要。
  2. 単位あたりの生産量をさらに上げる養殖方法の検討。
  3. 付着物への対策。

[具体的データ]


図1 養殖ヒジキと天然ヒジキの生長(藻長)


図2 養殖ヒジキと天然ヒジキの生長(生重量)


図3 ロープ1mあたりのヒジキ生産量(生重量)


[その他]
研究課題名:浅海増養殖に関する研究事業(ヒジキ)
予算区分 :県単
研究期間 :平成11年〜
研究担当者:伊藤龍星
発表論文等:瀬戸内海ブロック藻類研究会誌第2号(印刷中)