水産研究成果情報検索結果




アマモ場造成のための苗床シートの開発
広島県は減少したアマモ場を再生するために,平成16年からアマモの種子を発芽させて得られる実生苗を大量生産する技術開発に取り組んだ。その実生苗によるアマモ場造成の実用化に向けて,苗の生育に有効な機能や移植後の流出防止機能を有し,且つ運搬や移植にも適した基盤(苗床シート)を開発した。
担当者名 広島県立総合技術研究所 水産海洋技術センター 技術支援部  連絡先 Tel.0823-51-2173
推進会議名 瀬戸内海ブロック 専門 漁場環境 研究対象 あまも・すがも 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(3)水産生物の生育環境の管理・保全技術の開発
[背景・ねらい]
 アマモは内海の浅海域に広く分布する海草で,アマモが群落を形成した「アマモ場」は魚介類の産卵・育成の場として,あるいは光合成によるCO2の吸収など,海域環境浄化に重要な役割を演じている。かつて広島県沿岸部には干潟とともに広くアマモ場が分布していたが,戦後の高度経済成長に伴う干潟,浅海域の埋め立てや水質悪化によって,現在では昭和20年代の約1/3に減少してしまった。

 広島県では平成16年から研究機関のマトリックス方式による横断プロジェクト研究により,アマモ種子を発芽させ実生苗を大量に生産する技術を開発した。しかし,実生苗を用いるアマモ場造成は,移植用苗を安価で大量に確保することができる点で従来法(栄養株移植法,播種法)より実用的である反面,地下茎が未発達のため移植初期に波浪や潮流による洗掘で流出しやすく,苗の運搬や移植時の取り扱いが難しいなどの課題もあった。

 そこで,実生苗の生育に有効な機能,流出防止機能を有しかつ運搬や移植に適した基盤(苗床シート)を民間企業との共同研究で開発した。
[成果の内容・特徴]
1.アマモの種子をシートに播種することで,移植後,実生苗の根や地下茎が十分発達するまでの間,洗掘等による苗の流出を防止することができる。(図1−A,B,C)

2.シート本体に緩効性肥料を組み込むことで,栽培中の追肥が不要となりそれに要する労力も軽減できる。(図2)

3.多くの苗を傷めず効率良く運搬でき,苗の海底への搬入・敷設作業が楽になる。(図3)

4.シートは生分解性素材でできており,環境に優しい設計となっている。


[成果の活用面・留意点]
・苗床シートの開発によって,実生苗によるアマモ場造成法の実用化に目処がつき,アマモ場再生に向けた技術開発の大きなステップアップが期待できる。

・さらに,海底へ敷き詰める苗床のフォーメーションを自由に組み替えることが可能なので,アマモ場の形を任意に創造することができ,海底地形や目的用途に応じたアマモ場造成を行うことができる。(図4)
[その他]
研究課題名:広島湾流域圏環境再生研究〜太田川から広島湾までの自然再生めざして〜

研究期間:平成16〜18年

予算区分:県単独

研究担当者:相田聡

発表論文等:相田聡,高辻英之(2006):横断プロジェクト「広島湾流域圏環境再生研究」2)アマモ場造成技術開発,平成18年度広島県立水産海洋技術センター事業報告

[具体的なデータ]