瀬戸内海底層堆積物調査(藻場由来有機物探査調査)

航海期間:平成25年9月6日~9月10日

 「海の草原」アマモ場は、瀬戸内海の景観の象徴です。アマモ場ではアマモやアマモ葉上の微細な藻類により活発な光合成が行われ、多くの生物の住み場・餌場にもなっています。近年、UNEPの“Blue Carbon”レポートにより、アマモ場がマングローブ林や塩性湿地などとともに、光合成により吸収した二酸化炭素を海底に隔離する大きな役割を果たしていることが報告されました。もしかしたら瀬戸内海のアマモ場も地球温暖化の防止に役にたっているかもしれません。
 それを明らかにするためには、アマモ場内における調査だけでなく、アマモ場から流出した草体がどのように流れていき、最終的にどうなっているのか(完全に分解して二酸化炭素に戻るのか、それとも多少なりとも残存しどこかに堆積しているのか)明らかにする必要があります。このような目的で、アマモ場が多い備後・芸予瀬戸から、隣接する燧灘にかけて多くの調査点を設定し(図1)、海底堆積物の採集や水中の懸濁物を採集しました。採集した堆積物はDNA分析によるアマモ草体破片の有無や有機炭素量を調べ、瀬戸内海の潮の流れを再現した海洋物理モデルによるアマモ由来炭素の移動・堆積予測と照らし合わせる計画です。


 図1.藻場(アマモ場)由来有機物探査航海における堆積物採集点

 図2.採泥器で採集した海底堆積物
備後・芸予瀬戸における砂(上)、および燧灘における泥(下)

 これまでの調査では、分解し残ったアマモの破片は砂よりも泥の中に多いことが明らかになっています。多くの島がある備後・芸予瀬戸では、沿岸域にアマモ場も多いのですが、船の航行が可能な島の間の海峡部では潮の流れが速く、海底の堆積物は砂やレキ(小石)が中心でした(図2-上)。一方、海が大きく開け、潮流も緩やかな燧灘の海底堆積物は粒子の細かい泥でした(図2-下)。アマモ場が豊かに残る備後・芸予瀬戸と、そこで生産されたものが運ばれて堆積する燧灘。瀬戸内海の海域ごとの環境の多様性と相互の繋がりについて想像がふくらみます。