渦鞭毛藻ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ(Heterocapsa circularisquama

 ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマは渦鞭毛藻の一種でHoriguchi(1995)によって新種として記載された。大きさは約0.02mm前後。卵形もしくは洋ナシのような形で(下図参照)、細胞表層に薄いセルロース質の鎧板を有する。縦横2本の鞭毛を有し、活発に水中を遊泳する。本種は比較的小型で、形態的によく似た他種プランクトンも存在するため、現場での同定が非常に難しい。遊泳中に見せる「キツツキ」のような動作が、本種を同定する上で重要な特徴である。
 学名のcircularisquamaはラテン語で「丸い鱗=circle scale」を意味する。その名の通り、細胞表層に無数の「鱗片」を有していて、この基部の形状が円形に近いためこの名が与えられた。鱗片は基部の直径が0.0002mmと極めて微細なため、通常の光学顕微鏡では見ることができない。観察には透過型電子顕微鏡(TEM)を用いる。ヘテロカプサ属にはこの他にも8種類が知られているが、大半の鱗片は基部が三角形をしているという(Horiguchi 1995)。
 多くの渦鞭毛藻は特徴のある休眠胞子(シスト)を形成し、底泥中などで越冬・越夏しているが、本種では確認されていない。基本的には生活環のほとんどを遊泳細胞の形で過ごしているものと考えられる。ヘテロカプサは温度や塩分の急激な変化などにさらされると殻を脱ぎ捨てた一時性シスト(temporary cyst)を形成する。

増殖は専ら光合成によって独立栄養的に行われている。また、本種の細胞質内には多数のバクテリアが寄生している。この寄生バクテリアとヘテロカプサの関係についても興味が持たれる。

Heterocapsa circularisquamaの光学顕微鏡写真

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