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松山研究員に平成15年度日本水産学会奨励賞
1988年以前には出現していなかった渦鞭毛藻の一種、ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ(以降ヘテロカプサ)が日本の沿岸域に赤潮となって多発し、各地に被害をもたらしています。この種は、貝類だけをへい死させる特徴を持っており、カキ養殖業界やアサリなどが生息する干潟のある地域から恐れられ、対策が強く求められておりました。 松山幸彦研究員の生理生態学的研究により、ヘテロカプサの赤潮発生機構や貝類のへい死機構が明らかになり、赤潮発生予察手法を開発する契機をもたらすとともに漁業被害発生過程の追跡を可能にするなど学術・産業への貢献が顕著であると認められ、この度の受賞となったものです。 この研究により、ヘテロカプサは、海水温が30℃以上となり、さらに高塩分の環境となって、他種渦鞭毛藻の増殖は低下してしまっても増殖できることを明らかにするとともに、海底近くに発生して停滞する酸素濃度の極めて低い水塊(貧酸素水塊)に海底の泥から溶出する栄養塩が蓄積し、台風の通過に伴ってこの水塊が撹乱し周囲に栄養塩が供給されることによってヘテロカプサの増殖が促進されることを示しました。 また、ヘテロカプサは二枚貝や巻貝などに致死的な作用を及ぼす一方で魚類、甲殻類、その他の生物に対する影響は全く認められないなど、これまでの赤潮生物にはない種特異的な毒性を示すことも明らかにしました。 さらに、ヘテロカプサの細胞表層に毒素が存在することを見いだし、この毒素は細胞を破砕すると毒性を失うことを確認しました。これによりこの毒素は、不安定な糖タンパク質様物質であると推測されるため、生化学的性状を明らかにする研究が現在も行われています。 |
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